釧路地方裁判所 昭和40年(ワ)149号 判決
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原告主張事実によれば、原告主張手形には支払場所として持参払との記載がありかかる記載のある約束手形の効力について判断する。
約束手形は振出人が自らその住所又は営業所で支払をなす取立債務を原則としていると解せられるが、手形法は便益上第三者の住所において支払う第三者方払手形を認めている。そして約束手形の第三者方払の記載は第一次的には支払地における支払のなさるべき場所の指定という意味を有するが、他方約束手形の振出人に代りその第三者をして支払をなさしめる意味も包含し、手形法に定める第三者方払手形とは、かかる第三者の住所においてその第三者によつて支払われるべき手形を指称することは勿論であるが、更に約束手形の振出人がそこで支払をなすべき単純な支払の場所を記載した手形をも含むものと解せられる。そして第三者方払の約束手形における第三者は振出人以外の者であれば何人でも差支えなく、したがつて手形上の権利者である手形所持人が同時に右の第三者であることを妨げなく、之により該手形債務は持参債務となる。この第三者方払の記載は必ずしも何市何町何番何某方というがごとき表示を要求するものではなく、単に何某方とする表示でも足りるものと解せられるが右の第三者方払の記載として持参払との記載がある場合には、かかる約束手形は結局手形上の権利者である所持人方を第三者方として振出人がそこで支払をなすべき手形を意味し、所持人は満期に右手形をその住所で所持し被呈示者である振出人が支払のため手形金を持参しないときは当然呈示に対し支払拒絶があつたものと看做され、又前者に対し遡及するためには所持人が自己の住所で振出人を支払拒絶者として拒絶証書を作成することを要することとなる。もつとも支払場所は支払地内に存することが必要であり支払地以外を支払場所と記載してもその記載は無効と解せられるが、約束手形が転輾流通し手形所持人が支払地外に住所を有するに至つた場合にも、約束手形の振出人は自ら持参払と記載し手形所持人がその住所である支払場所での呈示を認めながら振出人自身所持人の呈示の効力を争うがごときことは許されないし、又遡及義務者に対する関係でも、遡及義務者は手形上の記載を承諾し手形行為をなしたものであるから、呈示の無効を主張することはできないと解するのが相当である。
してみれば持参払なる記載によつて手形が転輾しても基本手形の手形要件を破壊せず手形所持人は何等不利益を受けることがないから、かかる記載は前説示の意味で有効のものと解するのが相当である。(裁判官 松浦豊久)